太陽に手を伸ばしても




駅から一直線に延びていく、ゆるくて長い坂道。


この道を上がりきったところに、僕、伊藤陸の通うことになった星ヶ丘高等学校はある。




9月ももう終わりに近づいている。

にもかかわらず、まだまだ強い日差しが、僕の首の後ろを刺すように降りそそぐ。






「りくーー!

 りーーーー、くーーーーー!!!」




遠くの方から、すごい勢いで近づいて来る、元気いっぱいの声。

振り返ると、やっぱり千夏だった。




昔からあんまり変わらない、でも少しきらびやかになった、千夏の声はすぐにわかる。



「おはよう」


「ちょっと聞いてよー!頼斗がね、昨日の議会ん時めっちゃくちゃかっこよくて!」





また、頼斗の話か。

興奮気味の千夏に反して、複雑な気持ちになる僕。



「昨日提出しなきゃ行けない書類を私、議会に持っていくの忘れちゃったんだけどね、そのこと頼斗に話したら、俺がなんとかするから大丈夫、って言ってくれて!」


「で、どうしたんだよ、頼斗は」


「書類ないからってその場でアドリブでプレゼンやってくれて、で、私たちの企画が採用されたの!すごくない?もうほんとびっくりした!」


ものすごい勢いで話し続ける千夏の目は終始キラキラ輝いていた。






< 5 / 139 >

この作品をシェア

pagetop