太陽に手を伸ばしても
駅から一直線に延びていく、ゆるくて長い坂道。
この道を上がりきったところに、僕、伊藤陸の通うことになった星ヶ丘高等学校はある。
9月ももう終わりに近づいている。
にもかかわらず、まだまだ強い日差しが、僕の首の後ろを刺すように降りそそぐ。
「りくーー!
りーーーー、くーーーーー!!!」
遠くの方から、すごい勢いで近づいて来る、元気いっぱいの声。
振り返ると、やっぱり千夏だった。
昔からあんまり変わらない、でも少しきらびやかになった、千夏の声はすぐにわかる。
「おはよう」
「ちょっと聞いてよー!頼斗がね、昨日の議会ん時めっちゃくちゃかっこよくて!」
また、頼斗の話か。
興奮気味の千夏に反して、複雑な気持ちになる僕。
「昨日提出しなきゃ行けない書類を私、議会に持っていくの忘れちゃったんだけどね、そのこと頼斗に話したら、俺がなんとかするから大丈夫、って言ってくれて!」
「で、どうしたんだよ、頼斗は」
「書類ないからってその場でアドリブでプレゼンやってくれて、で、私たちの企画が採用されたの!すごくない?もうほんとびっくりした!」
ものすごい勢いで話し続ける千夏の目は終始キラキラ輝いていた。