太陽に手を伸ばしても
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生まれてこのかた千夏にしか恋したことのない僕は、当然、他の誰にも告白なんてしたことないし、
「誰でもいいから彼女が欲しい、」
なんて思ったことも一度なくて、特にモテようとしたりとかもしないから、いわゆる「種まき」もしたことも一切、無い。
かと言って自分で言うのもなんだけど、性格だっていわゆる男前なんかじゃないから、努力をしなかったらひとりでにモテたりすることなんてまず絶対にあり得ないわけで。
要するに、僕はつい今の今まで誰かに告白される、という経験を一度もしたことがなかったのだ。
だからこそ、栗本さんのその言葉には、ほんとうに言葉を失ってしまった。
結局あの後、リレーもまずまずの結果に終わり(最初からコクるつもりなんか無かったから結果なんて別にどうでもいいんだけど)、千夏はまた、あの白いテントへ戻っていった。
僕の方はと言うと、その後は特に出番とかもなかったし、転校生ってそんなに知り合いもいないから応援する人もみんなほどはいないしで運動場をぶらついていた。
で、途中、この前のバンドのみんなで一緒に写真撮ろうとかいうことになって、その時も特にこれといった変化もなく、みんなでワイワイしながら時が過ぎていった。
ああ、幸せだなあ、と思った。
転校生の僕に、こんな仲間ができて嬉しいなあ、って思った。
こんなことでもないと集まらなかったはずの、本来なら接点もなく終わっていったかもしれないメンバーが、こうして騒いでいられるのだから。