太陽に手を伸ばしても



「ご、ごめん…」


頭の中がごちゃごちゃしてきて、謝ることしかできない。

水分不足だからなのか、それ以外のせいなのか、頭がくらくらとしてくる。

体のどこに力が入ってるのかもよくわからなくて、僕は膝に手をついたままの変な姿勢で謝った。



「栗本さんにも、つらい思いさせてたんだな」

「私はそんなことなかったよ」


「え」


「うん、ほんとに。だから、気にしないで。私、陸くんに悪がってほしくないの」

そして栗本さんは、顔いっぱいに笑みを浮かべてこう言った。




「片思いしてるもんどうし、仲間じゃん。私も陸くんも。ただ、私の好きな人がたまたま陸くんだっただけ」




栗本さんの立つ昇降口の方から、秋らしい、涼しげな風がふわりとそよいできた。

ふっ、と僕の頭も軽くなる。


「ありがとう」


自然にそんな言葉が出てきていた。



どうして、栗本さんにはいつも何かと勇気づけられてしまうのだろう。

練習のときも、本番前も、栗本さんはいつも僕の背中をそっと、押してくれていた。


だから、栗本さんのためにも、やっぱり僕は千夏に思いを伝えようと思う。

伝えて、フラれて、自分の思いに区切りをつけよう。

それで、区切りがついたって栗本さんに報告しよう。



片思いしてる者どうし、僕たちは仲間なのだから。




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