太陽に手を伸ばしても
そう、千夏にとって、僕は
「何でも話せる幼なじみ」
なのだ。
何でも話してくれるのはすごく嬉しい。
だけど、千夏がしてくるのはたいてい頼斗の話。
千夏が頼斗の話をしてくるたび、僕はいつも少し複雑な気持ちになる。
頼斗。
それは、この学校に通う人なら誰もが認めるいわゆるアイドル的存在だ。
智己の話によると、一年生の頃から生徒会役員で活躍していて、成績はつねに学年トップ。
バレンタインの日には頼斗の机にはいつも大量のチョコレートがあるような、いわゆるモテモテの男子だ。
ファンクラブのようなものまであるし、何をするにも女子の間では写真が出回るほどの人気ぶりらしい。
今まで僕が通っていた学校にはこんな絶対的な存在はいなかったからとにかく驚いた。
逆に、ここまでかっこよくてモテるのに、彼女はいないらしい。
頼斗自身もかなり硬派で、誰か一定の女子に肩入れしたり、仲良くしたりするようなこともないらしかった。
みんなが好きだけどかえって誰も踏み込むことができない、そんな存在なのだ。
そんな「当たり前」が変わったのは確か9月の始め、僕が転校してきてからまだ間もない頃のこと。
その頃はまだ僕は、誰の顔の見分けもつかないような状況だった。
そんな中で、この学校の恒例行事だというバスケットボール大会にわけもわからず参加して、それが終わった直後のことだ。