太陽に手を伸ばしても
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マウンドに立った陸の目があまりにも据わっていて、俺は正直驚いた。
行きのバスではあんなにそわそわしてたのに、今の陸からはそんな気配を全く感じない。
キャッチャーの俺はしゃがんでいるからマウンドの陸を見上げる形になる。
陸はきりっと引き締まった表情で俺の方を見ている。
ベンチにいる千夏もこの陸の顔を見ているだろうか。
次の球を決めるサインを送りながらふと、そんなことを思った。
こっちのサインを読み取った陸がうなずく。
俺はキャッチャーミットをしっかりと構える。
陸は大きく振りかぶって、腕をしなやかに投げ下ろすと、俺のミットにずしん、と重い衝撃が伝わって、真っ直ぐの球が飛び込んできた。
スリーストライク、バッターアウト。
陸がこっちを見て、はにかんだ。
7回表、試合はもうとっくに後半に突入しているというのに、まさかの0対0だ。
強打者ばかりの相手校を、陸は怖いくらいに黙々と封じ込めていた。
この前の試合からは想像もできないくらいの圧倒的な力だった。
逆に、俺たちバッターは相手のピッチャーに手も足も出せない状態だった。
自分たちが何とかしなきゃ、陸が告白できない。
てゆーか、そもそも今日ここで負けたら春のセンバツへの夢も同時に消えてしまう。
そんなギリギリの状況にもかかわらず俺たちは悔しいことに、相手のピッチャーに翻弄されっぱなしなのだ。
次の打席ではなにがなんでも打たなきゃ。
そう思いながらベンチに戻り、マスクを外すと、陸と目が合った。