太陽に手を伸ばしても
はっとして顔を上げると、バットを放り出した陸が走りだしていた。
勢いよく地面を転がりだしたボールを外野が追いかけているうちに、 陸はあっという間に2塁までたどり着いた。
白く光るユニフォームを着た陸は、ベンチの方を向いて大きくガッツポーズした。
視線の先は、きっと千夏だ。
次のバッターは一年生の後輩だった。
この一年生は、なんか最近やけに目立ってた。
別に悪い意味合いじゃなくて、いい意味で。
だから、ちょっと期待できる。
一年生がバッターボックスで構えると、たくさんの野太い声援が飛んできた。
ピッチャーが投げる。
後輩がバットを大きく引く。
…カキーン!!
打った!!!
白い球が青空に勢いよく放り出された。
陸が全速力でホームに戻ってくる。
7回裏、0対1だ!
「よっしゃ!陸!!」
ベンチまで戻ってきた陸と力強くハイタッチする。
「…っしゃ」
そう言ってきた陸の手をぐっ、と握った。
その時だった。
握った手の力がすうっ、と抜けたと思うと、目の前にいた陸が足の方から崩れるようにドサッと音をたてて倒れ込んだ。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。