太陽に手を伸ばしても
ミカ
1
目が開く前に鼻の感覚の方がさきに目ざめたのか、真っ暗な視界にきつい消毒液のにおいが流れ込んできた。
そのにおいにつられるように、意外にも自然に目が開く。
白い天井。
淡い色合いのカーテン。
横を向くと薄い色の木の棚に小さいテレビ。
病院だ。
なんとなく想像はしていたけど、ここはやっぱり病院だった。
そう気づいたとたん、頭から背中のほうがぞわっ、とする。
病院、苦手なんだよな…。
みんなそうだろうけど、僕は特に。
ずっと前、友達のお見舞いに行ったきり、まったく縁のなかった病院。
なのにその時のことは妙に強く頭に残っていて、それがなんとなく怖くて仕方なくて、その後のお見舞いはみんな仮病を使ってキャンセルしてた。
僕は病院という場所がずっと怖かったのだ。
そんな僕が今病院にいる。
僕は今どんな状況なんだろう?
容態は?ここからどうなるのだろうか?
できることならこの空間だけは一生関わりたくなかったのに。
自分であれ他人であれ、ここはいつだって、何か悲しいものと向き合わなければいけない「何か」を持っている。
僕はいつここから出られるんだろう?
そして…
試合の勝敗は?