太陽に手を伸ばしても
ミカ








目が開く前に鼻の感覚の方がさきに目ざめたのか、真っ暗な視界にきつい消毒液のにおいが流れ込んできた。

そのにおいにつられるように、意外にも自然に目が開く。





白い天井。

淡い色合いのカーテン。

横を向くと薄い色の木の棚に小さいテレビ。



病院だ。

なんとなく想像はしていたけど、ここはやっぱり病院だった。

そう気づいたとたん、頭から背中のほうがぞわっ、とする。



病院、苦手なんだよな…。

みんなそうだろうけど、僕は特に。

ずっと前、友達のお見舞いに行ったきり、まったく縁のなかった病院。
なのにその時のことは妙に強く頭に残っていて、それがなんとなく怖くて仕方なくて、その後のお見舞いはみんな仮病を使ってキャンセルしてた。


僕は病院という場所がずっと怖かったのだ。
そんな僕が今病院にいる。



僕は今どんな状況なんだろう?
容態は?ここからどうなるのだろうか?



できることならこの空間だけは一生関わりたくなかったのに。
自分であれ他人であれ、ここはいつだって、何か悲しいものと向き合わなければいけない「何か」を持っている。




僕はいつここから出られるんだろう?

そして…



試合の勝敗は?




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