太陽に手を伸ばしても
あの後、僕の代わりに急きょ登板した1年生は逆転ホームランを打たれてしまい、僕たちのセンバツへの道は閉ざされてしまったらしかった。
「お前だけのせいなんかじゃないよ、俺も打てなかったし謝りたいのは、俺のほうだよ」
そう涙声で叫ぶ声がすると、みんな口々に謝りだした。
おいおいおいおい!!と、この空気を断ち切ったのはナス志の声だ。
「おいおい、もうみんな泣くなよーーー!みんなが泣くと、俺も泣きそうになるじゃないかー!!
…もう嫌だー!!!みんな泣きやめーー!!!」
「そうだよ、もうみんな泣くなよほんとに。このメンバーで来年の夏も戦えるんだからな?次のこと考えよう、次のことを」
智己はこんな時でも、チームのことを考えて気丈に振る舞ってくれている。
「……よーし!!焼肉行くぞーーー!!!」
顔をぐしゃぐしゃにしてナス志が大声を上げた。
「おー!」
みんなも口をそろえて叫ぶ。
「陸ー!!お前の分もたっぷり食べてきてやるからなー!!!」
そう言うナス志を先頭に、野球部員たちはがやがやと病室を出ていった。
こうして騒がしいいつもの仲間たちは、嵐のように去っていったのだった。