太陽に手を伸ばしても



あの後、僕の代わりに急きょ登板した1年生は逆転ホームランを打たれてしまい、僕たちのセンバツへの道は閉ざされてしまったらしかった。


「お前だけのせいなんかじゃないよ、俺も打てなかったし謝りたいのは、俺のほうだよ」

そう涙声で叫ぶ声がすると、みんな口々に謝りだした。





おいおいおいおい!!と、この空気を断ち切ったのはナス志の声だ。





「おいおい、もうみんな泣くなよーーー!みんなが泣くと、俺も泣きそうになるじゃないかー!!
…もう嫌だー!!!みんな泣きやめーー!!!」





「そうだよ、もうみんな泣くなよほんとに。このメンバーで来年の夏も戦えるんだからな?次のこと考えよう、次のことを」

智己はこんな時でも、チームのことを考えて気丈に振る舞ってくれている。





「……よーし!!焼肉行くぞーーー!!!」


顔をぐしゃぐしゃにしてナス志が大声を上げた。



「おー!」

みんなも口をそろえて叫ぶ。




「陸ー!!お前の分もたっぷり食べてきてやるからなー!!!」

そう言うナス志を先頭に、野球部員たちはがやがやと病室を出ていった。


こうして騒がしいいつもの仲間たちは、嵐のように去っていったのだった。



< 69 / 139 >

この作品をシェア

pagetop