太陽に手を伸ばしても
その時ちょうど後期の生徒会役員の立候補者を決めることになっていて、みんなが予想していた通りに頼斗が手を上げた。
「立候補だよね?次は生徒会長やってみなよ!」
そう言いながら室長の子はにこにこしていたけれど、頼斗はその言葉を遮るように、
「あの、青山さんを、
青山千夏さんを推薦したいんです」
と言ったのだ。
教室が突然静まりかえり、少しすると今度は逆にざわつき始めた。
…千夏ちゃん、ずるーい、いいなぁ、私も千夏ちゃんみたいに頼斗くんと生徒会の仕事したい…
あまり目立つ方でもない千夏の大抜擢にみんな驚きが隠せないようだった。
当時の千夏はまだほんとうにおとなしくて、今みたいな派手さや自信みたいなものは全くなかったから、
僕は、なんていうか、千夏がそういうことをやっているところが全然想像できなかった。
反対に、千夏の方はあまりに驚きすぎたのか、みんなのようには声を上げずに、斜め下を向いてどうしていいかわからなさそうにしていた。
硬派で女子という存在に一切触れてこなかったという頼斗が、初めて誰か一人、選んだ瞬間だった。