太陽に手を伸ばしても
千夏は心配してくれてるのに、こんな時だからこそ気を使ってくれてるのに、僕は何をそんなにピリピリしているんだろう。
弱いとこ見せないようにすると細かいことが考えられなくなって、なぜかぶっきらぼうになってしまう。
こんなところを千夏に見られるのが僕には耐えられない。
それどころか、今の僕ではこんな態度しかとれなさそうだから、千夏にはもう帰ってほしいとすら思ってしまう。
でも、僕のことを気遣ってくれている千夏にそんなこと思っちゃってるなんて、普段の僕に知られたらぶっ飛ばされそうだな。
ほどなくして、千夏が戻ってくる。
「はい、どうぞ」
僕の目の前のテーブルに置かれたのは、ポカリではなく小さな紅茶のペットボトルだった。
「あ、あれ」
「あ、これね、…スポーツドリンクは点滴の中身と一緒らしいから、」
「…?」
「だから、せっかくだと思って紅茶にしたんだ、スポーツドリンクは点滴で充分飲めるじゃん?…って考え方って、アリ?」
千夏が首をかしげてふふっと笑う。
手に取った小さいペットボトルを両手で包み込むように持つと、熱が手にじんわりと伝わってくる。
少し熱すぎるくらいの熱が心地よかった。
全力でバンドやって、全力で野球やって、僕もみんなも汗ばっかりかいてきたけど季節はもうすっかり秋なのだ。