太陽に手を伸ばしても
この人はこんなことを僕から聞いてどうするのだろう。
しかもさばさばした雰囲気をかもし出しているわりには質問の内容は案外、細かいし女々しい。
まあ、女子だから普通の話か。
「いや、彼女の方から振ったんだったら、心配ではないかもしれないです。ただ、彼氏のほうは、よっぽど嫌われたんだろうな、と思ってけっこう落ち込むと思います」
そこまで早口で言い終わって、僕は急いで図書室の出口に向かった。
なんか、よくわかんないけどめんどくさい。
とにかくここの空間から抜け出さないと。
それしか考えられなかった。
「ちょっと待って!」
ぴしゃりと放たれたその声に思わず振り返ってしまった。
振り返った視線の先にはきっ、と見開かれたその人の目がある。
悲しいのか怒っているのか、何を考えているのかわからない、でも視線をはずすことだけは確実に許さないような、そんな目をしていた。
しばらく、といっても数秒間、そのまま視線を外せずにいる。
その人は一瞬ほっとしたように表情をゆるめた。