太陽に手を伸ばしても



その"A氏"(僕には名前を教えてくれなかった)は、2年生にしてすでに生徒会副会長という、中学校の生徒会事情からしてはすごい肩書きの持ち主だった。




ミカは、最初はその人のことをあまり快くは思っていなかった。

顔はいいし、スタイルも抜群で。
おまけにスポーツ万能で、勉強もよくできた。


それだからか、「作り物の優等生」のミカとは違って誰からも認められ、どの生徒からも評判がよかった。

ミカに注意されてしかめっ面する人たちも、A氏に同じことを言われるとあまり嫌そうな顔をしなかった。



それどころかA氏は、冗談なんか言っちゃったりして、ちゃっかり相手を笑わせちゃったりもするような、そんな一面も持ち合わせていた。


そんなA氏を見るたび、ミカは現実と理想の差を見せつけられたような気がして、うんざりしてしまうのだ。



そんなこんなで、ミカはA氏に対して出来すぎでちゃらちゃらした印象しか持てなかった。


A氏へのそんな印象が変わったのは夏の始めのある日がきっかけだった。


その日も生徒会役員は朝からあいさつ当番で、みんな汗をかきながら門の前に立っていた。


予鈴が鳴って、肩に下げていたたすきを外しながら門を後にしようとすると、



「あ、ミカちゃん、これ生徒会室に置いてきてもらえるかな?」


「あ、はい」



そう生徒会長の女子に言われて手渡されたのは全員分のたすきだった。



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