太陽に手を伸ばしても
「あ、あの、もうすぐ本鈴鳴っちゃいそうなので一時間目終わった後でもい…」
「なんで?走ったら間に合うでしょ??それくらいやってよ」
「あ、はい、すみません、なんでもないです」
「じゃあ、ちゃんと運んどいてね、授業始まるまでに」
ここでも自信のなさを見透かされたのか、ミカは生徒会の中で、「こき使われる」側の人間になっていた。
たすきを持って走り出すと、生徒会室どころか、校舎に入ったところで本鈴が聞こえてきた。
遅刻確定だ。
誰の得にもならない、誰も望んでいない、正直煙たがられるだけのあいさつ当番なんかをして自分は遅刻する。
しかも他の役員のみんなはこっちの苦労も知らずに平然と教室で本鈴を聞いたのだろう。
もうこんな生活、耐えられない。
自信を持ちたくて見つけた居場所だったはずなのに、どうしてここで踏みにじられているんだろう。
クラスにも、生徒会室にも、気持ちをわかってくれる人はいない。
もっと言えば、自分を取りまく状況は格段に悪くなっている。
私はとぼとぼと階段を登った。
重くないはずのたすきが妙に重く感じられた。
階段を踏みしめるたび、足から重い振動が目に伝わってきて、こらえている涙がこぼれ落ちそうになった。
「…ふう」
やっと生徒会室のドアの前までたどり着いた。
なのに。
「…あ、あれ?」
何度もガチャガチャとドアノブを回してみる。
「し、閉まってる…」
目の前が真っ暗になっていくような気がした。
最悪だ。
鍵を取りに行くために、4階のここから、1階の職員室までまた戻らなきゃいけない。
「もう、本っ当に嫌だ…」
くるりと向き直って後ろを向いたその時、階段から上がってくる人影があった。
そう。
A氏だった。