太陽に手を伸ばしても
「ミカさん、ちょっと待ってて」
驚く私なんか全然気にもとめずに、A氏は持っていた鍵で生徒会室のドアを開けた。
何が起きているのか、正直よくわかんなかった。
「鍵、開いてなかったんじゃないかって思ったから」
「あ、ありがとう…」
生徒会室に入って、たすきを棚にしまい、腰を下ろすと涙が出てきた。
「そんなちょっとしたこと、まじで気にしなくていいから。それよりもさ、いつもいつも、本当にありがとう」
「え?」
ここにいるやつはみんな正直嫌な人間ばっかりだよ。本当に。だけどさ、ミカさんは違う。人のことを比べたり優劣つけたりしない。
ミカさんみたいに強い人になりたかった。
A氏はそう言った。
なんか、よくわからない。
こんなに弱い私のことを強いって言うなんて。
私はそう思った。
だけど、いつもは弱いとこなんて一個もないんじゃないかって思うようなA氏にそんなことを言われると、不思議なことになぜか心がほっとした。
人間、強いだけの人なんていないのかもしれないな、って思えたら、他人が怖くなくなるような気がしたから。