太陽に手を伸ばしても




「ミカさん、ちょっと待ってて」


驚く私なんか全然気にもとめずに、A氏は持っていた鍵で生徒会室のドアを開けた。



何が起きているのか、正直よくわかんなかった。

「鍵、開いてなかったんじゃないかって思ったから」


「あ、ありがとう…」


生徒会室に入って、たすきを棚にしまい、腰を下ろすと涙が出てきた。


「そんなちょっとしたこと、まじで気にしなくていいから。それよりもさ、いつもいつも、本当にありがとう」

「え?」


ここにいるやつはみんな正直嫌な人間ばっかりだよ。本当に。だけどさ、ミカさんは違う。人のことを比べたり優劣つけたりしない。
ミカさんみたいに強い人になりたかった。


A氏はそう言った。


なんか、よくわからない。
こんなに弱い私のことを強いって言うなんて。
私はそう思った。



だけど、いつもは弱いとこなんて一個もないんじゃないかって思うようなA氏にそんなことを言われると、不思議なことになぜか心がほっとした。


人間、強いだけの人なんていないのかもしれないな、って思えたら、他人が怖くなくなるような気がしたから。


< 83 / 139 >

この作品をシェア

pagetop