太陽に手を伸ばしても



「ミカさんが口滑らして途中でライト、って言ったからさ、それ、土方頼斗のことですか?って聞いたら何も答えずにそのままどっか行っちゃったから、結局僕もよくわかんなかったんだよね」




「そっか…」

頼斗の表情が少し緩んだ。 


「なんか、あいつらしいな…」



頼斗が彼女のことを考えているときって、こんな顔をするんだろうな、って思った。


きっとクラスのどんな人にも見せない、もちろん千夏だって見たことのない姿なんだろう。



ちょっとした表情の変化なのに、そんな頼斗の表情を見ていると、僕たちには立ち入ることのできない、不思議な隔たりすら感じた。





「お見舞い、早く行ってやれよ」

智己が言う。



「だよな、こんな風に一方的にフラれて、音信不通なんてありえないもんな。きっとこれだって何か訳あってこんなことになってるんだろうから」

そう言う頼斗は、まるで自分に言い聞かせてるようにしか見えなかった。


いつも誰よりも堂々としてて抜け目のない頼斗が、今日はずっと小さく、小さく見えた。



それが僕にはなぜか、何よりとても悲しかった。







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