太陽に手を伸ばしても




2 

 


「えー!お前、青山さん好きなのかー!?お前からしたらめっちゃ高嶺の花なのにかーー??」



クラブハウスのむし暑い更衣室。
何がおもしろいのか、ナス志は恐ろしいほど満面の笑みで聞き返してくる。


「き、聞こえるだろっ」
僕が慌てていると、



「千夏?今日もあいつ生徒議会とかいって休むって言ってたからいないだろ~」

と、けろっとした顔で智己が言う。



「ほんと来なくなっちゃったよな、千夏のやつ」


「な。生徒会の仕事、よっぽど忙しいんだろうな」



「ああ。忙しいな、生徒会の仕事は」

わざとらしく顔を歪めるナス志。


  
「てゆーかさ、」

智己がナス志を指差す。



「お前も議会じゃないのかよ?」



そう智己が言い終わらないうちに、
うわーっ、そーだったーーー!、と叫びながら、ナス志は部室を飛び出していった。






ナス志はこの学校の生徒会の書記をやっている、いわゆる頼斗や千夏の仕事仲間だ。

本名は那須淳志。もちろんナス志はあだ名だ。
好物はもちろん、ナスである。



優等生で完璧な他の生徒会役員と違って、どこへ行ってもうるさくてお調子者の、ムードメーカー的存在だ。

 
転校してきたばかりの僕でも、ナス志の気さくさと図々しさのおかげで、だいぶ打ち解けあった仲になってきていた。




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