太陽に手を伸ばしても


* * *

 

「今日は、おごらせてよ」
 

案内されて席に座るなり、頼斗はいつものさわやかな笑顔でそう言った。



頼斗が学校の近くのファミレスに僕を呼び出したのは次の日の夕方のことだった。




「え?」


「いや、ほんっっと、陸には感謝してるから」



そう言って頼斗は僕に向かって手を合わせるそぶりをした。

頼斗の笑顔が元に戻っていた。




ああ、と僕は思った。

この笑顔で、この自信と爽やかさを持ち合わせたこの笑顔で、頼斗はいろんな女子たちをあんなにも惹き付けているんだろうな。




別にこれは顔じゃない。
学力でも、地位でもなかった。

頼斗には、僕にはない強さと自信があった。
僕にはない強さと自信…。







「陸、」


「あっ…」


「びっくりするじゃん、急に思考停止したみたいに固まんないでよ」


「ああ、ごめんごめん」




メニューを選んでジュースを取りに行って一息ついたところで、頼斗は昨日の夕方、ミカさんのいる病院に行ったときのことを話しはじめた。




「最初なかなか会ってくれなくてさ、電話しても、『もう別れたでしょ?会いに来ないで』の一点張りだったんだよな」


「え?」


だけど、頼斗が「どこの病院?」と聞いた途端、ミカさんは急に涙を流しながら謝りだしたのだという。



ミカさんは、頼斗には入院したことすら知らせていなかったそうなのだ。




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