太陽に手を伸ばしても
結局、勘定は本当に頼斗が全部済ませて、僕たちはファミレスを後にした。
帰り道、秋の冷たい風のなか、僕はひとりで歩きながら考えていた。
どうしても頼斗のあの言葉が頭に引っ掛かったままだった。
『あー、あの人なんかしゃべりにくかっただろ、えらそうだし、高圧的だし』
『めんどくさそうな奴とか思ったかもしれないけど誤解しないでほしいな、あれがミカのなりたい自分なんだろうから』
ミカさんのなりたい自分って何だったんだろう。
頼斗の言うように、えらそうで、高圧的な人になんてなりたいと思うはすがない。
確かに、実際僕も初めは少し怖かったし、ぜったい歳上だと思っていたけれど。
しかも、頼斗はミカさんのことを弱い、って言ってた。
あんなに強そうなミカさんのことを。
だけど、ミカさんが話す昔のミカさんは今よりずっと頼りなくて、それなのにどこかひたむきで、真っ直ぐに見えた。
それだからこその弱さなんてのもあったのかもしれない。
さっきから僕が気になってた今と昔のミカさんの違いが結局答えなんだと思う。
ミカさんは、昔は弱かったんだ。
ずっと、強い人になりたかったんだ。
だけど。