太陽に手を伸ばしても




だけど、中学生の時の頼斗はそんな当時のミカさんのことを強いと言った。

そして今の頼斗はミカさんのことを弱いと思っている。




なんか僕からしたら反対のような気もするけど、たぶんこれが正解なんだろうな、となんとなく僕は思った。


今僕に見えているのは、こうありたい、という理想の姿を目指す姿なのかもしれない。


だとしたら。

中学生の頃、まだ右も左もわからずにただ自信を失っていたミカさんに隠された強さを見つけた頼斗はすごいと思う。

だけど、そのときの反動か何かでまた違った「強さ」を身につけてしまったミカさんの弱さをわかってあげられる頼斗はもっとすごいと思った。






やっぱり頼斗はすごい人だ。

今回のは、この前まで思ってたのとはまた違う意味で。

イケメンだとか、生徒会長、とか、学校1の人気者、とか。
そういう意味じゃまったくなくて。


僕たちが頼斗を見ていたこの視点とは全く違う視点で、その人の本当のところを見つめられるのだから。




遠くの方から微かに、秋の虫の声が聞こえる。



僕は千夏のことを、どれくらいわかってあげられるのだろうか。





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