太陽に手を伸ばしても



「もうこれ何周目なんだよ、さっきからおんなじとこばっか探してさあ!」


智己のイラつきはいよいよ大きくなってきた。




「他のクラスの奴はみんなちゃんといるのにさ、俺らのクラスの奴だけどうしてどこにもいないんだよ!!」





確かにそれもそうだ。
みんなはカバンをバスにつめたり、バスの外でしゃべったりしてるのに、なぜか僕のクラスの人だけどこにもいないのだ。



「あー、歩き回ったらめっちゃ暑くなってきたんですけど!!…ごめんちょっと待って」




そう言ってリュックを地面に下ろした智己がパーカーを脱ぎ始めたその時、僕の手元で携帯が小さく震えた。








『準備完了。入ってきて!』







千夏からだ。






僕は急いで携帯をポケットにしまうと、智己のリュックを持ち上げて言った。



「あ、あのバスじゃない?行こっか」


ちょっと、ではなくだいぶ、嘘くさい言い方になったかもしれなかった。
だけどすっかり怒っている智己には気づかれるはずがない。




「はあ?それさっきお前が違う、ってさんざん言ってたやつじゃんかよお前なに言ってんだよ」



顔をしかめる智己の腕を強引に引っ張り、人混みをかき分けながら目的のバスまで一直線に歩く。

ゴールまであと少しだ。



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