太陽に手を伸ばしても
「ほら、やっぱりそうだ」
バスの運転席の上にはD組と書いてある。
「それはこっちのセリフだよ…」
「まあまあ、とりあえず中入ろう」
智己が荷物を入れてもらっている間、どきどきしながら上を見上げた。
窓はカーテンが全部閉めきられて中は全く見えない。
後ろで智己はまだ何かぶつぶつと文句を言っている。
「先入ってよ」
僕は智己を先にバスに上がらせる。
バスのステップを上がった先には。
パァンッ。
パン、パン、パンッ。
たてつづけに鳴るクラッカーの音。
カラフルに飾られたバスの車内。
朝早くから準備した僕たちの努力(?)の結晶だ。
「お誕生日、おめでとうーーーー!!!」
えーっ、と言ったままの口でフリーズする智己にクラッカーから飛び出した赤や黄色のテープが容赦なく降り注いだ。
今日は待ちに待った修学旅行。
そして、智己の誕生日。
「うわああああみんなああー!何してくれんだよみんなあああーーー!!」
キャラにもなく嬉し涙をぼろぼろと流す智己を乗せて、バスはひとまず大阪へと向かっていった。