幸せの出会いかた
その優しさに、また涙が出てしまう。
震える肩に、置かれていた手のひらで、男性が、軽く肩先を数回なでてくれた。
次の電車がホームへ入ってくる音が聞こえる。
人目に触れすぎては、男性に申し訳ない。もう顔をあげなくてはと、頭をあげようとしたら、
「まだこのままで。だいじょうぶです。もう少し落ち着いてください」
「すみません」
電車から降りた人たちの足音が聞こえる。
しばらくたって、その音が落ち着いた頃、
「もう泣き止みました。」と伝え、彼の腕が両肩から外れるのを待って、顔をあげた。
ハンカチで、顔を拭いてから、
「突然申し訳ありませんでした」
深々とおじぎする。
「俺の言ったことで、傷つきましたか?」
男性は、あまり表情を変えずに問う。
「いえ! 逆なんです。その、うれしかっただけなんです」
男性は、驚いた顔をする。
「公衆の面前で、本当に申し訳ありませんでした。とっさに隠していただき、ありがとうございました。もうだいじょうぶです」
相手の反応を気にせず、たたみかけるように言った。
黙って聞いていた男性は、眼鏡に手をやり整えてから、
「このまま、はいさよならとはいけないです。あなたも少し落ち着かせてから帰った方がいい。なにより、なぜうれしかったのを知りたいです。少し食事につきあってもらえませんか?」
(うれしかった理由を知りたいの?)
これだけ迷惑をかけたのだし、でも、ほとんど見ず知らずの男性に付いて行ってよいのだろうか?考えあぐねていると、
男性が、鞄の中から社員証カードを取り出して見せ、
「山中相太と言います。歳は30。未婚、彼女もいません」
と、言う。
(か、彼女の有無まで!?)
名刺には、
谷口電装株式会社
山中相太
紹介された通りの名前と、今より少し若い雰囲気でうつる姿が載っていた。
真面目な人そうだな。
だいじょうぶかな。
私も鞄の奥から同じように取り出し、
ぎこちないながら、山中さんに見せる。
苅谷電機販売株式会社
戸田佐保乃
「戸田佐保乃と申します。
3つ下です。私も未婚、彼氏いな・・」
「あっ、すみません、女性に言わせてしまって」山中さんが、途中でさえぎったが、ほとんど言い切ったので、わかるだろう。
お互いなんだか照れてしまう。
「では、飯屋に行きましょうか」
ゆっくりと階段をあがり、改札を抜ける。
見慣れた風景が、少し違ったふうに見えた。
震える肩に、置かれていた手のひらで、男性が、軽く肩先を数回なでてくれた。
次の電車がホームへ入ってくる音が聞こえる。
人目に触れすぎては、男性に申し訳ない。もう顔をあげなくてはと、頭をあげようとしたら、
「まだこのままで。だいじょうぶです。もう少し落ち着いてください」
「すみません」
電車から降りた人たちの足音が聞こえる。
しばらくたって、その音が落ち着いた頃、
「もう泣き止みました。」と伝え、彼の腕が両肩から外れるのを待って、顔をあげた。
ハンカチで、顔を拭いてから、
「突然申し訳ありませんでした」
深々とおじぎする。
「俺の言ったことで、傷つきましたか?」
男性は、あまり表情を変えずに問う。
「いえ! 逆なんです。その、うれしかっただけなんです」
男性は、驚いた顔をする。
「公衆の面前で、本当に申し訳ありませんでした。とっさに隠していただき、ありがとうございました。もうだいじょうぶです」
相手の反応を気にせず、たたみかけるように言った。
黙って聞いていた男性は、眼鏡に手をやり整えてから、
「このまま、はいさよならとはいけないです。あなたも少し落ち着かせてから帰った方がいい。なにより、なぜうれしかったのを知りたいです。少し食事につきあってもらえませんか?」
(うれしかった理由を知りたいの?)
これだけ迷惑をかけたのだし、でも、ほとんど見ず知らずの男性に付いて行ってよいのだろうか?考えあぐねていると、
男性が、鞄の中から社員証カードを取り出して見せ、
「山中相太と言います。歳は30。未婚、彼女もいません」
と、言う。
(か、彼女の有無まで!?)
名刺には、
谷口電装株式会社
山中相太
紹介された通りの名前と、今より少し若い雰囲気でうつる姿が載っていた。
真面目な人そうだな。
だいじょうぶかな。
私も鞄の奥から同じように取り出し、
ぎこちないながら、山中さんに見せる。
苅谷電機販売株式会社
戸田佐保乃
「戸田佐保乃と申します。
3つ下です。私も未婚、彼氏いな・・」
「あっ、すみません、女性に言わせてしまって」山中さんが、途中でさえぎったが、ほとんど言い切ったので、わかるだろう。
お互いなんだか照れてしまう。
「では、飯屋に行きましょうか」
ゆっくりと階段をあがり、改札を抜ける。
見慣れた風景が、少し違ったふうに見えた。