漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
憐れに思った。
化物と化したエルミドは、言葉を忘れ思考力すらも失っている。
しかしアンバーに対する欲求とファシアスに対する憎しみは膿のように消えずにいるらしい。「あんばーあんばー」とおぞましい声を出して。
「…!?」
魔力が暴発した。
それにはもはや標的など無かった。破裂するようにはじけ飛んだ無数の魔球が、事態の急変に凍りついたように立ち尽くしている兵たちに襲いかかった。
「あぶない…!」
咄嗟にアンバーが『力』でヴェールを作り、包むように魔球を受け止めた。
しかし縦横に飛んで行った一部が兵に襲いかかる。
魔球を受けた兵は瞬時に暗黒の光に包まれて、生気を失って倒れていく―――。
恐怖が一瞬で広まった。
逃げ惑う兵たち。それを追い詰めるように魔球が後を追う。次々と倒れていく兵たちを見てエルミドは狂喜して魔球を発し続ける。もはやそれには意志などない。邪悪に染め上げられた魔獣となったのだから。
「エルミド…」
アンバーはその憐れな王太子を思い、うなだれた。
それは鎮魂を願うの黙想でもあった。
罪のない兵を傷つける魔獣と化した者を野放しにしておく道理はない。
アンバーは意識を集中させ『力』を高めた。
『力』は自分の中でこそ生まれる。それを悟った今、『力』は湧水のように生まれて自在になった。
アンバーは見えない球を抱えるように細腕を高く掲げた。
するとそこに眩い光が生まれた。閃光がエルミドに向かって真っすぐにのびる。
光の円の中に囚われたエルミドの身体から、焼けたように煙が昇る。
「ぐああああ」
化物と化したエルミドは、言葉を忘れ思考力すらも失っている。
しかしアンバーに対する欲求とファシアスに対する憎しみは膿のように消えずにいるらしい。「あんばーあんばー」とおぞましい声を出して。
「…!?」
魔力が暴発した。
それにはもはや標的など無かった。破裂するようにはじけ飛んだ無数の魔球が、事態の急変に凍りついたように立ち尽くしている兵たちに襲いかかった。
「あぶない…!」
咄嗟にアンバーが『力』でヴェールを作り、包むように魔球を受け止めた。
しかし縦横に飛んで行った一部が兵に襲いかかる。
魔球を受けた兵は瞬時に暗黒の光に包まれて、生気を失って倒れていく―――。
恐怖が一瞬で広まった。
逃げ惑う兵たち。それを追い詰めるように魔球が後を追う。次々と倒れていく兵たちを見てエルミドは狂喜して魔球を発し続ける。もはやそれには意志などない。邪悪に染め上げられた魔獣となったのだから。
「エルミド…」
アンバーはその憐れな王太子を思い、うなだれた。
それは鎮魂を願うの黙想でもあった。
罪のない兵を傷つける魔獣と化した者を野放しにしておく道理はない。
アンバーは意識を集中させ『力』を高めた。
『力』は自分の中でこそ生まれる。それを悟った今、『力』は湧水のように生まれて自在になった。
アンバーは見えない球を抱えるように細腕を高く掲げた。
するとそこに眩い光が生まれた。閃光がエルミドに向かって真っすぐにのびる。
光の円の中に囚われたエルミドの身体から、焼けたように煙が昇る。
「ぐああああ」