漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
魔と一体化した血肉が、聖なる光に焼かれているのだ。
エルミドは喉をかきむしるようなしぐさをしてもがいた―――が、エルミドの身体から魔力が染みだし、守るように自身を包んだ。閃光がはね返される。


「そんな…」


アンバーは息をのんだ。
終わりを願って込めた『力』がはじきかえされるとは―――と思ったのも束の間、魔球がアンバーに向かってきた。
虚をつかれたアンバーにその高速の動きに対応できる余裕はなかった。防御が間に合わない―――背筋に冷たさが走ったその時、魔球が一刀両断され、アンバーを避けて左右に飛んでいった。


「大丈夫か!?」


ファシアスがアンバーを守るように前方に立ち剣をかまえていた。


「ありがとうファシアス。でもよく剣だけで…」

「この剣には『力』が宿っている。今まであんたが俺に与えてくれた『力』が俺の中に蓄積されていた。それを剣に集中させたんだ」


ちら、とファシアスはアンバーを一瞥して、エルミドを見すえた。


「俺ならあの化物をやれるかもしれない。この剣に『力』を高めれば」


『力』を剣一点に集中して、エルミドを貫こうというのだ。
つまりそれは、ファシアスが身をていしてエルミドに向かっていくということを意味している。


「そんなまねは危険だわ…!」
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