漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
暴走状態となった魔獣に至近距離に近づくなど…いかにファシアスであっても命の保証はない…。


「大丈夫だ。俺を誰だと思っている?」


ファシアス・ソロ・イロアス。
ひとりで100人の兵の力を発揮し、敵国にも名を恐れられている最強の武人。そして…


「おまえだけの騎士だ」


ファシアスはアンバーの前にひざまずき、その手を取った。


「おまえを傷つける者がいたら、盾となって守る。おまえが挑むのなら、剣となって突き進む。おまえが『力』を持つ特別な存在だからじゃない。国や民を守ろうとする大義ある立場だからじゃない。おまえだからだ。アンバー。おまえを愛しているから」


そうして恭しく口付け、見詰めてきた瞳には、みなぎる自信と熱い愛情があふれていた。


「どうか俺に『力』を与えてくれ」


アンバーはファシアスに微笑んだ。
そのおだやかな笑顔は、ファシアスのほとばしる愛情をすべて吸収してもあまるほどに柔らかくやさしかった。


「ファシアス・ソロ・イロアス。貴方に『力』を授けます。その『力』で私と私が愛するすべてものを害する悪しき存在を、うち滅ぼしなさい」
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