漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
仰せのままに―――。ファシアスはかしずき、そして剣を掲げた。

その肩にアンバーはそっと手を添える。すると光がその手からファシアスの身体をおおい、そしてゆっくりと移動して剣をまばゆく光らせた。

一見なんの変哲のない剣。だが、アンバーの『力』を得て、今生まれ変わった。魔を薙ぎ払う聖なる剣へと。


まばゆい光を放つ剣に気づき、エルミドは魔力を高めた。
魔に染まった身が、聖なる光の脅威を本能で理解する。

獣じみた声を上げて、今までにないほどの魔力を高めて手の中に強力な魔球を作る。怯えるように辺りがうす暗くなり、風が吹いて悲鳴を発した。

あんなものを当てられればひとたまりもない。
だがファシアスとアンバーは逃げなかった。ファシアスはアンバーが与えてくれた『力』を信じて。アンバーはファシアスを信じて。


ゴゴゴゴゴゴ


異様な低音が大気を震わせる。
恐ろしいまでの大きさになった魔球が、空気を押し潰してふたりにゆっくりと、追い詰めるように近づいてきた。


ファシアスは剣をかまえ、四肢に力を入れ、そして魔球を受け止めた。
魔球に塗りつぶされぬように、剣から光がまばゆく放たれる。
聖剣と魔球の一騎打ち―――だが、魔球の威力が一歩上で、剣が押される―――。


「ファシアス!!」
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