漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
灰が消えいく空に、うっすらと晴れ間が差した。
アンバーはゆっくりと立ち上がり、祈りを込めた言霊を放った。
すると一気に雲が引き、ふたたび陽光が降りそそいだ。

その光を浴びてアンバーは兵たちに振り返ると、神々しいまでの恭しさで頭を垂れた。


「私が未熟であるせいで貴方たち民をたくさん苦しめたことを、心よりお詫びいたします」


長く頭をたれた後、戸惑う兵たちを真っ直ぐに見つめてアンバーは続けた。


「私は神に近い特別な存在ではありません。ただの弱い人間です。迷いや不安に翻弄され自分を見失いがちになる、貴方たちと同じ普通の人間です。でもだからこそ、大切なものに、守りたいものに改めて気づきました。それは大切なたった一人の人でもあり、自分と同じ人間であるあなたたち民でもありました。そして解かりました。大切なものを守りたいと心の底から願ったその時に、人はこれまでにない『力』を発揮するのだと」


兵たちは、アンバーの言葉に顔を見合わせた。
目の前に立つ美しい少女を、神の化身か神そのもののように思っていたのに、その口は「自分はただの人間だ」と言う…。だが、不思議と不安も憤りも感じなかった。
真っ直ぐで誠実な瞳をしている少女は、まさに清らかさと神々しさをまとった『聖乙女』だった。
そのどこまでもひたむきで真摯な有様に、神に近い強さとやさしさを感じた。
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