漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
一人がつぶやいた言葉は、やがて兵全体に広まった。


「アンバー様おひとりに全てを背負わすのはよくないよな」

「大切なものひとつ守れないで男が務まるか」

「むしろ、俺たちがアンバー様を守らなければならないんじゃないか?」


兵たちに新たな意思がひろまり、高まり、そしてその熱はアンバーに向けられた。


「どうか戻って来てください、アンバー様!」

「今度は俺たちが全力で貴女をお守りします!」

「ともに守りたいもののために生きていきましょう!」


アンバーは返事出来なかった。涙で言葉が詰まって。
大切な民が、今度はアンバーを守ると言ってくれている。なんと尊くありがたいことだろう。


(この国はきっともっとよくなるにちがいないわ)


アンバーが『聖乙女』とかしずかれていた頃よりも、もっと強くやさしく。


そんなアンバーを後ろから抱き寄せた存在があった。
ファシアスは、アンバーにしか聞こえな小声でそっと囁いた。


「ったく、急に調子づきやがって。おまえを守るのは俺だけの仕事だってのに」


そんな様子を見て、兵たちが冷やかすように歓声を上げたのだった。





こうして、ファシアスとアンバーは王都へ戻ることになった。





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