漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
最近のアーロンはこうしてアンバーをからかうことで勉強疲れを紛らわせているらしい。
王太子のお目付け役と言う名目だが、実際のところは、いいからかい相手だ。

でも、それも楽しい。
『力』は神から借りるものと誤解していた頃は、宮以外の世界とは隔絶して生きていかなければならないと思い込んでいたから。

とは言っても、『力』はやはり清浄な宮にいる方が高めることができた。
だがアンバーはもうじっとしていたくはなかった。いろんな所に行って、いろんな人に出会い話がしたい―――そう、幼い頃そうだったように、自由でいたかった。今はそれが叶えることができて、とてもうれしい。
けれども、人間である以上、アンバーにもさらなる欲が生まれていた。


「イジワルはほどほどにしてください王太子様」

「すまぬすまぬ。つい悪ふざけが過ぎる。どれほど親しみを感じても、そなたは国を守ってくれている尊き『聖乙女』なのにな。今日もこの国は美しく平和だ。そなたの『力』のおかげだ。ありがとう」

「いえ…。それはちがいます…。単に、見えていないにすぎません…」


ふいに沈んだアンバーを見て、アーロンは怪訝な顔をした。
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