漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
ファシアスは顔を伏せるようにふかぶかと頭を下げた。その浮かぬ顔をさすがにひっこめることは難しいようだった。
それはアンバーとて同じだった。
その任に就くということは、つまりはファシアスとの長い別れを意味したからだ。
叶うなら自分も国中を見て回りたい。欲を言うならファシアスと一緒に…。だが『聖乙女』たる身、よほどの理由がない限りそのようなわがままは許されない…。
「ああそうだ言い忘れていた。任に就く際は補佐役をひとり連れて行くといい。といってもファシアスほどの男なら護衛はいらぬだろう。いるとしたら民の窮地を聖なる『力』で救うことができるような人物……アンバーを連れて行ったらどうだ?」
ファシアスは顔を上げた。アンバーもアーロンを凝視する。
「お、王太子様…いけません…!私は国の安寧を守るという務めが」
「『力』をふるうのに場所は関係ないのだろう?それについ先ほど言っていたではないか。『私にはまだまだ知らないことがあるのだ』と」
「……」
「ならば二人で行って来い。そしてこの俺の治世ではもっと国が平穏で多くの民が幸せであるように務めを果たしてこい。ファシアスはそのおまえの護衛役だ。どうだファシアス、これならおまえも文句なかろう?恋人に会えなくなるくらいでそんな顔をするな。俺は王太子だぞ」
「…おまえが意地の悪いことを言うからだろ、アーロン」
それはアンバーとて同じだった。
その任に就くということは、つまりはファシアスとの長い別れを意味したからだ。
叶うなら自分も国中を見て回りたい。欲を言うならファシアスと一緒に…。だが『聖乙女』たる身、よほどの理由がない限りそのようなわがままは許されない…。
「ああそうだ言い忘れていた。任に就く際は補佐役をひとり連れて行くといい。といってもファシアスほどの男なら護衛はいらぬだろう。いるとしたら民の窮地を聖なる『力』で救うことができるような人物……アンバーを連れて行ったらどうだ?」
ファシアスは顔を上げた。アンバーもアーロンを凝視する。
「お、王太子様…いけません…!私は国の安寧を守るという務めが」
「『力』をふるうのに場所は関係ないのだろう?それについ先ほど言っていたではないか。『私にはまだまだ知らないことがあるのだ』と」
「……」
「ならば二人で行って来い。そしてこの俺の治世ではもっと国が平穏で多くの民が幸せであるように務めを果たしてこい。ファシアスはそのおまえの護衛役だ。どうだファシアス、これならおまえも文句なかろう?恋人に会えなくなるくらいでそんな顔をするな。俺は王太子だぞ」
「…おまえが意地の悪いことを言うからだろ、アーロン」