漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「ありがとうございます。私のわがままを叶えてくださって」


涙をこらえた美しき碧眼は、強くまっすぐ未来の王を見上げた。


「時間が許す限りこの目と耳で知ってまいります。そしてたくさんの民を支えるよう努めてまいります。王太子様のそのおやさしさが、国中にいきわたるように」


そうして祈る。
留守の王宮の平安を願って。アーロンが健やかに王太子として研鑽がつめるように。


「ああ。しっかり頼むぞ『聖乙女』…いや、アンバー」


アーロンはアンバーのその清らかな様にしばし見入り、そして微笑んだのだった。


アーロンが城に戻るとアンバーはおそるおそるファシアスの様子をうかがった。
自分は願ってもいないことだったが、ファシアスの方はどうなのだろう。国境のことも気がかりだろうし、知識も体力もおぼつかないアンバーを護衛するのはかなりの労力だろう。億劫に感じているのでは…と見やると、ファシアスと目が合って、ニッと笑われた。


「んじゃ早速行くか!」

「行く…?ってもう…!?」

「見たいんだろ?広い世界を」
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