漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「どう?」


ヒューとファシアスは唇を鳴らした。
完全無欠の癒しの力だった。
『聖乙女』は存在そのものが神から賜った御力そのものとされる。唇からその御力の息吹をそそぐことで、どんな傷も病も回復させ、さらにはこれまで以上の力を与えるのだ。
『聖乙女』よりこの癒しの力を賜れる者は高貴な血筋の者か特別に認められた者のみだった。確かに尊い力だ、と次第にみなぎってくる活力を感じつつ、あっさりと享受できてしてしまったことに拍子抜けする。


(これが…アンバーが自由を代償に手に入れた力か…)


『聖乙女』はその証を生まれながらにして持っていた。
母親の体内から出た瞬間に輝きを放ったり、肌に証があったり…表れ方は様々だが共通しているのは、生まれながら、ということだった。

けれどもアンバーの場合、その証が表れたのは10歳の頃と異例の遅さだった。そしてそれは、それまで当たり前のように享受していた自由を奪う封印でもあった。
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