漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「って…『聖乙女』様」
「ん?」
「…いい加減、離れてくれませんかね」
なぜかアンバーはまだファシアスの腕を離さないでいた。
「なんなんすか」
「いえ、固いのね、と思って」
と、アンバーはペしぺしとファシアスの腕を叩いて興味深げにつぶやいた
「おまえの腕、まるで鉄のようだわ。この腕で重い剣と盾を持ち、この国を守ってくれているのね…」
「……」
「ありがとう、イロアス将軍。あなたの武勲はこの最奥の宮にまで聞こえてくるのよ」
ファシアスはそっとアンバーの手から逃れた。
「血の匂いが気にならないのか」
アンバーの手がゆっくりと離れた。ファシアスも距離を置くように一歩下がった。
ファシアスは自身の身体に日増しに血の匂いがこびりつくのに気づいていた。
アンバーには一週間前と伝えていたが、実は国境から帰って来たのは一ケ月前だった。その間はひたすら血の匂いを払い落とすために費やしたのだ。そうしないと、アンバーの『御力』を穢してしまいそうだったから。
(皮肉な話だな)
ファシアスは思わず自嘲した。
アンバーが守ってくれる国を外の脅威から守りたい一心で戦えば戦うほど、アンバーと相いれない存在になっていく…。
「ん?」
「…いい加減、離れてくれませんかね」
なぜかアンバーはまだファシアスの腕を離さないでいた。
「なんなんすか」
「いえ、固いのね、と思って」
と、アンバーはペしぺしとファシアスの腕を叩いて興味深げにつぶやいた
「おまえの腕、まるで鉄のようだわ。この腕で重い剣と盾を持ち、この国を守ってくれているのね…」
「……」
「ありがとう、イロアス将軍。あなたの武勲はこの最奥の宮にまで聞こえてくるのよ」
ファシアスはそっとアンバーの手から逃れた。
「血の匂いが気にならないのか」
アンバーの手がゆっくりと離れた。ファシアスも距離を置くように一歩下がった。
ファシアスは自身の身体に日増しに血の匂いがこびりつくのに気づいていた。
アンバーには一週間前と伝えていたが、実は国境から帰って来たのは一ケ月前だった。その間はひたすら血の匂いを払い落とすために費やしたのだ。そうしないと、アンバーの『御力』を穢してしまいそうだったから。
(皮肉な話だな)
ファシアスは思わず自嘲した。
アンバーが守ってくれる国を外の脅威から守りたい一心で戦えば戦うほど、アンバーと相いれない存在になっていく…。