漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「…だいぶ長居したな。祭典前にすみませんでした。俺はもう行きます」
「え…あ、待ってファシアス!」
急によそよそしい態度に変わってしまったファシアスに、怒ったのかと思ったアンバーは思わずその腕に手をやった。
「…また…来る?ファシアス…」
「…」
「来週にはね、美味しい菓子が届くのよ?来ないと、独り占めしちゃうんだから…」
くるり、と振り向いたファシアスは、いつものイジワルげな表情に戻って、ニッと笑みを浮かべた。
「じゃあ是非あずかろうか。『聖乙女』サマが子豚のように太っては格好悪いからな」
「そ、そんなに食べないわよっ」
「ははは」
笑いを残してファシアスは宮から出ていった。
宮を囲む結界から一歩出ると、急にすりガラスに阻まれたように、宮はぼんやりと蜃気楼のように視界に見えるだけになった。
ファシアスを見送るアンバーの姿も、幻のようにかすんでいた。
だが、ファシアスの目にはしっかりと残っていていた。寂しげにファシアスを見つめる、切ないまでに澄んだ新緑色の瞳を。
「…ち。だから、期待しちまうんだろうが」
舌打ちして、ファシアスは苦々しげにひとりごちた。
「ほんとは『連れて行って』って言いたくて、たまらないんだろ…」
「え…あ、待ってファシアス!」
急によそよそしい態度に変わってしまったファシアスに、怒ったのかと思ったアンバーは思わずその腕に手をやった。
「…また…来る?ファシアス…」
「…」
「来週にはね、美味しい菓子が届くのよ?来ないと、独り占めしちゃうんだから…」
くるり、と振り向いたファシアスは、いつものイジワルげな表情に戻って、ニッと笑みを浮かべた。
「じゃあ是非あずかろうか。『聖乙女』サマが子豚のように太っては格好悪いからな」
「そ、そんなに食べないわよっ」
「ははは」
笑いを残してファシアスは宮から出ていった。
宮を囲む結界から一歩出ると、急にすりガラスに阻まれたように、宮はぼんやりと蜃気楼のように視界に見えるだけになった。
ファシアスを見送るアンバーの姿も、幻のようにかすんでいた。
だが、ファシアスの目にはしっかりと残っていていた。寂しげにファシアスを見つめる、切ないまでに澄んだ新緑色の瞳を。
「…ち。だから、期待しちまうんだろうが」
舌打ちして、ファシアスは苦々しげにひとりごちた。
「ほんとは『連れて行って』って言いたくて、たまらないんだろ…」