漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
誰よりも活発に自然の中を駆け回り、誰とでも仲良くするのが好きな少女が、なぜ。
誰よりも自由が似合っていた少女がなぜ、あのような囚われの身にならなければならないのか。


『光栄なことよ』


宮入りが正式決定した数年前の日、だがアンバーはそうファシアスに言って胸を張った。
ファシアスの方が腑に落ちなくて、食って掛かった。


『本当にそう思うのかよ?ずっと宮に籠ったきりなんだぞ?』

『その代り、衣服も綺麗なものを着られて、食べ物だって困らないわ』

『一生、死ぬまで宮に籠ってもか』


アンバーは一瞬押し黙った。
だが、明るい口調で言った。


『その代り、私は特別になる。それまでアンバーって呼び捨てだったのに、手の平を返したように『聖乙女』、『アンバー様』ってかしずかれられるのよ』

『……』

『まるで神様だわ。私は、この先ずっと神様のように崇め奉られるのよ』

『……でも、それって独りぼっちってことだろ』


言った次の瞬間、ファシアスは言葉を失った。


アンバーが泣いていたから。
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