漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
武人として常に戦いの場に身を置く存在。
埃と血にさらされた彼は、清浄とは正反対の人間。
その人間が『聖乙女』の宮に出入ることを自ら促した。
会うたびに血の臭いと刃そのものような剣呑とした雰囲気を強くする彼は、宮にはふさわしくない人間。これ以上近づいてはいけない。接し続ければ、『御力』が衰えてしまうかもしれない。
そう分かっていたのに…終わらせることは出来なかった。
ファシアスと離れることは考えられなかった。身が裂かれてしまうような悲しみに襲われるから…。
『アンバー』
低くて、それでいてやさしい声。
そして、意志の強さを思わせる漆黒の瞳。
時折、あの瞳に真っ直ぐに見つめられると、息がつまるような高鳴りを覚えた…。けれども、夏の夜のようにやさしさと温かさにも満ちたそれは、孤独に耐えるアンバーの心を包むように支えてもくれた…。それは国を守る者同士の絆とも言えた。
(ファシアスは外敵から国を守り、私は中から支える。同じ国を守る立場であるのに、なぜ接することが許されないの)
恐れ多いと分かっていても、アンバーは天を見上げた、にらむように。
埃と血にさらされた彼は、清浄とは正反対の人間。
その人間が『聖乙女』の宮に出入ることを自ら促した。
会うたびに血の臭いと刃そのものような剣呑とした雰囲気を強くする彼は、宮にはふさわしくない人間。これ以上近づいてはいけない。接し続ければ、『御力』が衰えてしまうかもしれない。
そう分かっていたのに…終わらせることは出来なかった。
ファシアスと離れることは考えられなかった。身が裂かれてしまうような悲しみに襲われるから…。
『アンバー』
低くて、それでいてやさしい声。
そして、意志の強さを思わせる漆黒の瞳。
時折、あの瞳に真っ直ぐに見つめられると、息がつまるような高鳴りを覚えた…。けれども、夏の夜のようにやさしさと温かさにも満ちたそれは、孤独に耐えるアンバーの心を包むように支えてもくれた…。それは国を守る者同士の絆とも言えた。
(ファシアスは外敵から国を守り、私は中から支える。同じ国を守る立場であるのに、なぜ接することが許されないの)
恐れ多いと分かっていても、アンバーは天を見上げた、にらむように。