漆黒の騎士の燃え滾る恋慕

冷酷な王太子

長い金髪を肩で結わえた長身の青年が、聖賓の間にずかずかと入ってきた。

王太子エルミド。

この国の将来の国王となる人物。
高貴な雰囲気をまとった美青年だったが、アンバーはエルミドが苦手だった。冷やかな印象を思わせる青い目は、王族以外の人間を見下すような冷酷さを感じさせたからだ。
しかしさすがに王太子に無礼をはたらくわけにはいかない。アンバーは深々と頭をたれると、重々しく答えた。


「この凶事、まさしく私の力不足の証に他なりません。必や事態を収め、民の安全をいち早く」

「事態を収める、と?」


アンバーの言葉を遮ると、エルミドは氷のように冷ややかな声で続けた。


「そんなことが貴女に可能なのですかな『聖乙女』よ。とうにお気づきではないですか?この事態はまさに神の怒りのあらわれ。そしてそれは民ではなく、貴女自身に向けられているものだと」

「…!」

「これは凶事ではない。貴女自らが招いた断罪。民はそれに憐れに巻き込まれただけだと、素直に認めてはどうかな」



アンバーは震えそうになるのをこらえながら、冷静に問うた。


「どういう意味でしょう」

「『聖乙女』たる存在がなんと白々しい態度を!」
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