漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
この身を捧ぐ誓い
その頃ファシアスは雹雨から人々を避難させるのに王都中を走り回っていた。
だが、その間も気にかかるのはアンバーのことばかりだった。
麗らかな日々が続いていた初春のこの時期に、雹雨はどう考えてもおかしい。
アンバーの『御力』ならばこの異常気象を退けられたはずだ。だがそれが出来なかったということは、アンバーの身になにかが起きているのか…はたまた、アンバーの御力をしのぐ『なにか』がこの災厄を意図的に引き起こしたのか―――いずれにせよ、アンバーの身の回りでよからぬ事態が起こっていることは明白だった。
「集まっていた市民はみな建物内に避難させました」
そうアレクが報告した時も、いまだ雹雨は続いていた。
ファシアスたち兵も、城内で天井がある場所に避難していた。
祭典に湧き立っていた街中は、岩石のような雹とそれに破壊された建物の瓦礫や木片やらが散在し、悲惨な有様に変わり果てていた。
「アンバー様は、いったいどうされてしまったのでしょう…」
アレクが城を見上げながらつぶやいた。
ファシアスは答えなかった。黙りこくってただ城を見つめているその目は、思いつめているようでも、あせっているようでもあった。
(それはこの方が一番訊きたいことか…)
だが、その間も気にかかるのはアンバーのことばかりだった。
麗らかな日々が続いていた初春のこの時期に、雹雨はどう考えてもおかしい。
アンバーの『御力』ならばこの異常気象を退けられたはずだ。だがそれが出来なかったということは、アンバーの身になにかが起きているのか…はたまた、アンバーの御力をしのぐ『なにか』がこの災厄を意図的に引き起こしたのか―――いずれにせよ、アンバーの身の回りでよからぬ事態が起こっていることは明白だった。
「集まっていた市民はみな建物内に避難させました」
そうアレクが報告した時も、いまだ雹雨は続いていた。
ファシアスたち兵も、城内で天井がある場所に避難していた。
祭典に湧き立っていた街中は、岩石のような雹とそれに破壊された建物の瓦礫や木片やらが散在し、悲惨な有様に変わり果てていた。
「アンバー様は、いったいどうされてしまったのでしょう…」
アレクが城を見上げながらつぶやいた。
ファシアスは答えなかった。黙りこくってただ城を見つめているその目は、思いつめているようでも、あせっているようでもあった。
(それはこの方が一番訊きたいことか…)