漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
この人以上に『聖乙女』アンバーのことを気にかける国民はいない、とアレクは思う。
アンバーを想っている時のファシアスの目には、凛とした中に暗い影が潜んでいた。
恋に溺れている事実を隠そうとしないその表情を、アレクはいつも切なく思った。武力、知力にかかわらず容姿、人格まで兼ね備えた人物が、どうしてこのような辛い恋―――けして叶わぬ恋に身を焼かなければならないのだろう…。
「ファシアス様…!」
そこへ、状況収集に向かわせていた兵卒が駆けつけてきた。
アンバーの状況を密かに探らせていた者だったが、その顔は動揺を隠しきれないように強張っていた。
ファシアスは焦りをおさえて報告を促した。
「どうした」
「アンバー様が…アンバー様が、王太子の命により捕われました」
「なに?」
ファシアスは思わず聞き返した。
「『聖乙女』が捕われた、と?どういうことだ」
「く、くわしいことはわかりません。ですが…やはりこの天候に関係があるのかと」
「この天災を招いた咎を問われたと言うのか?」
「その可能性が高いかと…」
アンバーを想っている時のファシアスの目には、凛とした中に暗い影が潜んでいた。
恋に溺れている事実を隠そうとしないその表情を、アレクはいつも切なく思った。武力、知力にかかわらず容姿、人格まで兼ね備えた人物が、どうしてこのような辛い恋―――けして叶わぬ恋に身を焼かなければならないのだろう…。
「ファシアス様…!」
そこへ、状況収集に向かわせていた兵卒が駆けつけてきた。
アンバーの状況を密かに探らせていた者だったが、その顔は動揺を隠しきれないように強張っていた。
ファシアスは焦りをおさえて報告を促した。
「どうした」
「アンバー様が…アンバー様が、王太子の命により捕われました」
「なに?」
ファシアスは思わず聞き返した。
「『聖乙女』が捕われた、と?どういうことだ」
「く、くわしいことはわかりません。ですが…やはりこの天候に関係があるのかと」
「この天災を招いた咎を問われたと言うのか?」
「その可能性が高いかと…」