漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「アレク。ここはまかせた」

「え…ちょ、ファシアス様?!」


側近の返答を待つことなくファシアスは駆け出した。
向かうのは城―――アンバーが囚われているという城の内部だ。


(俺のせいなのか…?)


焦る。
安寧を脅かすものがあったとしても、アンバーなら気づいて事前に排除できたはずだ。なのにそれが叶わなかったのは、『御力』が弱まっていたからに違いなかった。
『御力』が弱まる、つまり穢れに触れてしまったということ―――そしてその穢れとは…


(俺自身だ。俺がアンバーを穢してしまった…)


解かっていた。けれども抑えられなかった。
いけないと分かっていても、あの美しい金色の髪と新緑色の瞳を見たくて、笑い声が聞きたくて、笑顔が見たくて…。

だが、愛してしまったのだ。想わずにはいられなかった。

理性だけで抑えられるなら、とっくに割り切っている。それができないのなら、とことんこの気持ちに付き合って、擦り消えるまでこの身を捧げるまでだ。


(たとえ天と地が見離しても、俺が必ずあいつを守る)





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