漆黒の騎士の燃え滾る恋慕

奪われた貞潔

アンバーとエルミドを包んだ白光は部屋中を満たしただけでなく、重い曇天をもつんざいた。

しかしその輝きがピークだった。アンバーは目の前の光景に目を疑った。自らが放った光が、逆戻るように漆黒の光に押し返されていく。
黒が白を塗りつぶすように大きくなりやがて完全に飲み込むと、最後はエルミドの身体を覆って炎熱のようなゆらぎとなった。

その禍々しい姿にアンバーは戦慄を覚えた。


「まさか…貴方は…」


ニタリとエルミドは笑った。


「人は俺を剣技を磨かない腰抜けだと言う。しかし俺は剣以上に強いものを追い求めていたに過ぎない。そして今、それを手に入れた」


握りしめた手からにじみ出た黒光が空をたゆたい、アンバーに忍び寄る。そのねっとりとした光に熱を感じて、アンバーは思わず後ずさった。
触れれば、たちまちにただれてしまうような禍々しい黒光。その正体に『聖乙女』アンバーは直感で気づいた。


魔力。


それは古より存在し、禁忌とされていたもの。
神の力と対をなす悪魔の力であった。
< 51 / 128 >

この作品をシェア

pagetop