漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
言葉をつまらせるアンバーを慰めるように、エルミドはわざとらしく口調をやわらげた。


「貴女は本当は、あの窮屈な宮から出たかったのでしょう?貴女は幼少時代は普通の少女として自由な生活を送っていた。今の貴女は、いわば捕われた小鳥のような身。ずっとずっと、外の世界が恋しかったのでしょう?だからああして外部の男を受け入れた」


嬲るような口調にアンバーは顔を背ける。しかしエルミドからにじみ出てくる魔力が蛇のように近づいて、じわじわとアンバーの肌をあぶった。


「私はそんな貴女の願いを叶えようとしたのだ。今日の雹雨は、私の力によるもの」

「これほどの惨事を、貴方が引き起こしたと…!?」

「そう。すべては貴女を救うため。少し強引でしたが、魔力で貴女の力をねじ伏せることで貴女を役目から解き放って差し上げたかったのです。そしてそれは神の意志でもある」

「神の…?」

「考えてもごらんなさい。『聖乙女』の『御力』は神の力。絶対的であり、魔力にさえ打ち勝つ。なのに貴女はこの雹雨を止めることができなかった。魔力に敗れてしまった」

「…」

「これがなにを意味しているかわかりますね?そう、貴女は神に見放されたのです」
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