漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「でも、御力が万全ならエルミドの魔力も退けられた…。今日の事態を招いてしまったのは、私のせいに他ならない…。私が『聖乙女』たるに相応しい行いをしなかったから…」
ファシアスの表情が歪んだ。
悔しさにも憤りにも感じる表情だった。
「私は国や民に背く行いを犯した。ごめんなさい…ファシアス…。私が弱いせいで、おまえまで巻き込んでしまった。こんな私をかばえばおまえも罰せられてしまう。私はもう『聖乙女』ではない。おまえが命をかけて守るべき存在ではないの。だからお願い。私を置いて逃げ」
「いやだね」
きっぱりと言い切ったその顔は、なにを言ってるんだとでも言いたげな表情だった。
「俺は『聖乙女』だからあんたを救ったんじゃない。あんただから救ったんだ。たとえ国や民からそしられても、神さえもが見放しても、あんただけは俺が絶対に守る」
まっすぐに見つめられて、アンバーは目をそらせなくなった。
漆黒の瞳は意志の強さをふくんだ光を放っていた。
アンバーは胸の高鳴りを覚えた。
どうして彼はこんなにも大切にしてくれるのだろう。
自分をかばえば、それまで手に入れてきたもの―――将軍としての地位、武人としての誇りや権威―――が失われてしまうかもしれないのに…。
涙をこらえるアンバーの頬をファシアスの大きな手がそっと包みこんだ。
「小さいな」とでも言いたげに、その手は頬をゆっくりと撫で、やがて顎に指を置いた。
「その代り、欲しいものがある…」
ファシアスの表情が歪んだ。
悔しさにも憤りにも感じる表情だった。
「私は国や民に背く行いを犯した。ごめんなさい…ファシアス…。私が弱いせいで、おまえまで巻き込んでしまった。こんな私をかばえばおまえも罰せられてしまう。私はもう『聖乙女』ではない。おまえが命をかけて守るべき存在ではないの。だからお願い。私を置いて逃げ」
「いやだね」
きっぱりと言い切ったその顔は、なにを言ってるんだとでも言いたげな表情だった。
「俺は『聖乙女』だからあんたを救ったんじゃない。あんただから救ったんだ。たとえ国や民からそしられても、神さえもが見放しても、あんただけは俺が絶対に守る」
まっすぐに見つめられて、アンバーは目をそらせなくなった。
漆黒の瞳は意志の強さをふくんだ光を放っていた。
アンバーは胸の高鳴りを覚えた。
どうして彼はこんなにも大切にしてくれるのだろう。
自分をかばえば、それまで手に入れてきたもの―――将軍としての地位、武人としての誇りや権威―――が失われてしまうかもしれないのに…。
涙をこらえるアンバーの頬をファシアスの大きな手がそっと包みこんだ。
「小さいな」とでも言いたげに、その手は頬をゆっくりと撫で、やがて顎に指を置いた。
「その代り、欲しいものがある…」