漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
そうして逃げ続ける中で、いつしか辺りは夜の闇に覆われた。

王都から可能な限り走り逃げて、ファシアスとアンバーは森の奥深くに逃げ隠れた。これでしばらくは見つかる危険を避けられるだろう。
かといって火も起こせないため、夜の寒さに耐えながらの野宿となった。


「寒くないか」


抱きかかえていたアンバーをおろしながらファシアスは気遣った。
ずっとファシアスの胸に抱かれていたから寒さなど微塵も感じなかった。むしろファシアスの身体の方が心配だった。弱い月光の下で見るその顔色は、昼間よりもずっと悪く見える。


「私なんかはいいわ。それより背中の具合は?」

「たいしたことはない」

「診せて」

「たいしたことないと言って…っ…!」


有無を言わせず衣をまくると、筋肉に引き締まった広い背中は魔弾のせいで黒く焼けただれていた。
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