漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「俺はあんたを守りたい」

「私はおまえを守りたい」


きれいに言葉が重なった。
共に面食らった顔で見詰めあい、先に噴き出したのはファシアスの方だった。


「…俺はあんたに守られるほど弱くない」

「解かっているわ。でも、守りたいの」


アンバーは戸惑うように言葉を続けた。


「『御力』は残っている。いえ…正確には、元から『力』は存在し続けていたの。『御力』は神からの借り物ではない」

「なんだと?」

「おまえが今こうして無事でいるのがなによりの証」

「そうか…。やはり昨日の傷はあんたが…」


確実に刺されて致命傷を負った。意識が遠のくのを感じた。死を覚悟した。
だが目覚めた時はピンピンして痛みどころか傷もふさがっていたのだ。


「昨日落ちた時、声が聞こえた気がしたの。『『御力』はいつもおまえの中にある』と。
その声に、『『御力』は己自身の力だ』と教えてもらった気がしたの」

「その声は誰だ??」

「解からない…けど、それは問題じゃないわ」


アンバーはファシアスの腕を持ち、小傷にそっと口付けた。その神秘的な姿にファシアスは目を見張ったが、そうしている合間に小傷が綺麗さっぱりなくなったことに気づいた。一瞬の出来事だった。
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