漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
ファシアスはアンバーの身体を抱き締め、いっそう深く舌をしのびこませたが、やがてゆっくりとアンバーを押し戻した。
「………これ以上すると、歯止めがきかなくなる…」
口元を抑えたその顔は真っ赤になって焦るような表情を浮かべていた。
ひとりごちたファシアスをアンバーは怪訝な顔で見上げた。
(まだ…してたいわ…)
ぼうとした目で見詰めると、ファシアスは直視に耐え兼ねるように視線をそらして立ち上がった。
「い、いい加減、移動するぞ。向こうも俺たちが生きていることには気づいているだろうからな」
と早口に言うと、ファシアスは入口に向かった。
確かに安心なんかできる状況じゃない。アンバーも気を取り直してファシアスの後ろに続いた―――が、ファシアスは入口で立ち止まってしまっていた。
「ち…これほど執念深いとはな…」
すぐにアンバーもその不穏な言葉の理由が理解できた。
焦げ臭い臭いがする…・
さっきまで快晴だった空には、黒い煙が広がっていた。
王太子の追手がすぐそこまで来ていた。
※
「………これ以上すると、歯止めがきかなくなる…」
口元を抑えたその顔は真っ赤になって焦るような表情を浮かべていた。
ひとりごちたファシアスをアンバーは怪訝な顔で見上げた。
(まだ…してたいわ…)
ぼうとした目で見詰めると、ファシアスは直視に耐え兼ねるように視線をそらして立ち上がった。
「い、いい加減、移動するぞ。向こうも俺たちが生きていることには気づいているだろうからな」
と早口に言うと、ファシアスは入口に向かった。
確かに安心なんかできる状況じゃない。アンバーも気を取り直してファシアスの後ろに続いた―――が、ファシアスは入口で立ち止まってしまっていた。
「ち…これほど執念深いとはな…」
すぐにアンバーもその不穏な言葉の理由が理解できた。
焦げ臭い臭いがする…・
さっきまで快晴だった空には、黒い煙が広がっていた。
王太子の追手がすぐそこまで来ていた。
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