漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「自分の守りたいものは自分の力で守るものだ。人に頼るもんでも、ましてや借りものの力なんぞにすがるもんでもねぇ。そう思わないか、王太子サマ!」


武芸を磨くことを怠り、そのくせプライドが高く保身を気にし、挙句の果てに魔力などという禁忌に身をやつした者に誰が国を託せようか。
ファシアスの辛辣な皮肉に、エルミドは顔を歪めさせた。


「貴様…誰に向かって…」

「おっと、怒るってことは意識しているのか?来いよ、かかって来い。おまえには返しきれない借りがあるんだ」


王族に対するものとは思えぬ挑発的な態度に、エルミドは怒りで煮えくりかえった。


「逆賊が痴れたことを…。私はなによりも強大で優れた力をこの手に入れたのだ。無力な人間では到底得られない力を。清らかでいなければ保ち続けられない力ともちがう、絶対的な力を!いわば私は選ばれた存在。王たるに相応しい特別な存在なのだ」


煮えたぎる怒りが視覚化したように、魔力が黒い霧となってエルミドから発せられた。


「今ここでそれを証明してやる。おまえという逆賊を八つ裂きにしてな!」
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