漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
新たに発生したいくつもの魔のつぶてが一斉飛んでいき、ファシアスの剣と均衡している魔球に吸いこまれるように弾ける。すると魔球の重みがさらに増して、ファシアスは上半身を仰け反らせた。剣の輝きも魔球の暗黒に飲み込まれそうになる。


「くっ…」


腕の傷がついに悲鳴を上げ始めた。傷口から血が溢れだし、激痛がファシアスの意志を揺らがせる。


「ファシアス様…!!」


固唾をのんで見守っていた兵士たちから叫びが上がった。
押し潰されるように、ファシアスの身体が魔球と地面に挟まれた。


その時だった。


光が辺りをつんざき、白く世界を変えた。


白光は支えるようにファシアスをことさら強く照らした。
その強さは焼けただれるかと思うほどのもので、エルミドは思わず目をつぶった。
そして、わずかの間をおいてまぶたを上げた途端、目を疑った。
魔球が消え失せていた。


「な…これはどういうことだ…」

「…『聖乙女』様の復活だろ」
< 99 / 128 >

この作品をシェア

pagetop