再び始まった恋。
「いらっしゃい。久し振りだね!今日は綺麗な彼女も一緒なんだね?」
カウンターの席に着くなり、少しお年を召した男性が彼に話を振る。
久し振りって事は結構来てるんだ…
て、今彼女って…
しかも…綺麗だなんて…
お世辞でも嬉しい言葉。
そんなお世辞上手な板前さんに…
「全然顔出せないですいません…今日もお任せで…」
申し訳無さそうに謝り、注文をする彼。
あたしが彼女だって思われてるけど…否定しない訳?
あたし…その気になっちゃうじゃん。
自惚れちゃうじゃん。
たぶん彼はいちいちそんな事、触れる話でも無い。
なんて思っているんだろうけど…
あたしは、あたしは…
好きだから…好きだから…
間違われるだけでも嬉しいんだよ。
「はい、お任せね…」
お世辞上手な板前さんがそう言うと、
あたし達の前から姿を消した。
「あっ…嫌いな物とかあった?」
思い出した様にあたしに視線を向ける。
「ううん…特にないよ」
あたしの言葉に彼は軽く微笑む。