再び始まった恋。
そんな思いも口には出せず、
彼の後ろの座席へと大人しく跨がった。
「ちゃんと捕まって」
そう言われてもなかなか手を動かせないあたし。
「落ちちゃうよ」
捕まらないあたしに脅す様にそう言う彼。
触れたいのに触れられない。
触れたら決心が鈍ってしまいそうだから…
でも、これが彼との最後なら…
最終的にはそう思い、彼の腰辺りをぎゅっと力を込めて握った。
彼は握ったあたしの手を確認すると、エンジンを掛け…
何処に行くかも知らない場所へと走り出した。
走り出した勢いで、怖さもあり、彼の腰へと腕を回していた。
風と共に彼の香りがあたしの鼻を刺激する。
今は知りたくなかった彼の香りに思わず、涙が出そうなった。
こんな…最後の日にバイクで来るなんて、意地悪。
どうして、あたしの気持ち、わかってくれないのよ…
そんな思いを彼の背中へと心の中でぶつける。
そんな彼は勿論、あたしの気持ち何てわかる筈も無く…
軽快にバイクの操作をし、走り続ける。