再び始まった恋。

そんな思いも口には出せず、

彼の後ろの座席へと大人しく跨がった。



「ちゃんと捕まって」



そう言われてもなかなか手を動かせないあたし。


「落ちちゃうよ」



捕まらないあたしに脅す様にそう言う彼。



触れたいのに触れられない。

触れたら決心が鈍ってしまいそうだから…


でも、これが彼との最後なら…



最終的にはそう思い、彼の腰辺りをぎゅっと力を込めて握った。



彼は握ったあたしの手を確認すると、エンジンを掛け…

何処に行くかも知らない場所へと走り出した。



走り出した勢いで、怖さもあり、彼の腰へと腕を回していた。


風と共に彼の香りがあたしの鼻を刺激する。


今は知りたくなかった彼の香りに思わず、涙が出そうなった。



こんな…最後の日にバイクで来るなんて、意地悪。


どうして、あたしの気持ち、わかってくれないのよ…


そんな思いを彼の背中へと心の中でぶつける。



そんな彼は勿論、あたしの気持ち何てわかる筈も無く…

軽快にバイクの操作をし、走り続ける。




< 147 / 178 >

この作品をシェア

pagetop